小説「森に眠る魚」 角田光代

実在の事件をモチーフにしていて、かなり話題になった作品らしいです。
中々縁がなく、見つけた時には嬉しかった。

都会の幼稚園を中心に、5人のお母さんたちの物語。
さまざまな性格と生活レベルながら、初めは仲睦まじかった彼女たちなのに、
ふとしたことで踏み込んだ「小学校受験」の世界に呑まれ、
それがもとで焦りや嫉妬や疑心暗鬼にさいなまれ、ど不幸になっていく。

全編、息詰まるような日常サイコホラーで、とても疲れた(これは賛辞です)。
最初、5人の母親たちと子どもたちが矢継ぎ早に紹介されて、
馴染むまではちょっと区別するのに苦労した。
DQNの繭子ちゃんは個性的でわかりやすいけど、
セレブ系の千花とかおり、地味で内向的な瞳と容子は混同しやすい。
3人の園児と3人の女児の組み合わせも含めて、仕方ないけど人数多すぎ。

入り込むのに時間がかかった要因は、人が多すぎるのも勿論あるが、
自分が、思ってた以上に「お受験」に全く関心がなかったのも大きかった。
自分はやらないにしても、メリットがたくさんあるのは理解してるつもりだし、
満願成就して幸せになってる人も大勢おいでの筈なのに、
何もこんな、揃いも揃ってマイナスにならなくても・・などと薄く思ってはみたが、
否定するとか応援するとか以前に、心から興味がなくて気持ちが寄らなかった。
残念。ここに共感できれば、倍くらい面白かっただろうに。
つまらなかったわけではなく、残る重さは充分だったのですが。

有名な事件がもとになっているので、
どのキャラが誰なのか、あの暴発はどこで起きるのかという興味も強く引かれますが、
その部分は、最終的には肩透かしかも知れない。ネタバレかな、すいません。
でも、だからこそこの小説は、さらにさらに怖くなった。さすが上手。
取り返しのつかないことが起こってしまったあの不幸な事件を、
読んで楽しむではなく、ひとつの教訓として、それから先を生きて行く。
すべての人の近辺に、強引に着地して来ます。
読み物としてのエンタ小説じゃなくて、メッセージなんですね。
どれほどこの世の終わりみたいな苦しみに見舞われたとしても、
この世は別に終わりやしない、という、これは作者の優しさなのでしょう。
そういうところが、押しつけがましくて大嫌い、という意見もありそうだ。

でも私は、そこは嫌いじゃないです。
私にとって、感動はしないけど得るもののあった力作。
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by michiko0604 | 2010-02-26 22:15 | | Trackback | Comments(0)