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DVD 「空気人形」

原作は短編の漫画。夫が買ってる青年誌で、掲載時に読んだ。
知性をもった人間以外の存在のお話に弱い、と折に触れ書いていますように、
この題材もツボでした。哲学的で、ピュアでものすごく切ない。
かなりギリギリのキワモノなので、駄目な人は全然駄目だと思いますが。

ダッチワイフの空気人形が、ある日ふと「心」を宿す。
夜は人形のふりをしておとなしくおつとめを果たし、
朝、持ち主が出勤すると、いそいそとお出かけして町を冒険。
ありふれた街並みも空虚な人々も、彼女の純粋な眼を通して見ると、
胸が痛くなるくらいに美しくていとおしい。
やがて彼女はビデオ店の店員の若者に恋をして、
自分もその店でアルバイトとして働くようになる・・・。

というふうな、大人のファンタジーです。
細かいところはつっこまないでください。
原作はちゃんとビニール製でしたが、映画はもっと高級品ですよね。
ビニールだったら燃えるゴミだしね。自治体によるか。
というようなつっこみも、ナシでお願いします。<自分。

持ち主の中年男が、使用後に局部を取り外して洗う所とか、
シャレにならないくらい生々しいシーンもありますが、
意外に自分、引かなかった。そんなもんだろうと思うので。
というか、「うおお・・・(汗)」という気持ちにはなったけど、
最近、この気持ち予習したな?って気がして、思い出してみたら、
あれだ、「骸骨ビルの庭」(宮本輝)で、読んだんだった。
その時こそ「どっひゃー(苦笑)」という気分になったけど、
背景を考えると、これ笑っちゃいけないんだろうなと思ったし、
そういう仕組みになっていたのか!という素の驚きもあったので、
いやぁ、勉強になったなあ、と・・話が逸れました。

空気人形役は、韓国の女優さんで知らない人ですが、
さほど美人でもなく、よく見ると若くもないのに、
信じられないくらい可憐でかわいい。奇跡のようなキャスティング。
「わたしは、心を持ってしまいました」
「心を持つことは、苦しいことでした」
たどたどしいつぶやきまでも、ベストマッチ。

店員役のARATAさんもベストです。
無口で静かで物知りで、空虚で寂しくて、やさしい。

持ち主の板尾さんの物悲しい怪演も、リアルで痛ましくて良かった。
でも終盤の、
「人形に戻ってくれないか。そういうのがめんどくさいから、お前にしたのに」
という言葉が、めちゃくちゃ理解できてしまって、別角度から痛かった。

劇中で朗読される「生命は」という詩には、こみ上げるものがありました。
この詩に出会えたという一点だけでも、感謝し尽くせないくらい。
中盤のラブシーンの美しさは、出来れば一度観てほしい。
生理的に無理でなければ。
いやらしいかなぁ?エロティックではありますが、ほんと、きれいでしたよ。
でも終盤は、同じことをしてもちょっと汚れる。

素晴らしくファンタジックな前半に比べ、
後半はホラーテイストの悲劇に向かってしまいますが、
映画だから、これで仕方ないのだと思います。悲しいですが。
わたしは燃えないゴミ。あなたは燃えるゴミ。

うすく楽しみにはしてましたが、
個人的に、期待のはるか上を行く名作でした。手元に欲しいくらい。
点数をつけるなら、90点超。
by michiko0604 | 2010-04-15 12:56 | 映画・TV | Trackback