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小説「君が降る日」 島本理生

若い作者さんで、時々文章が生硬く感じるのは相変わらず。
でも、なんだかんだ好きですね。
オーソドックスなくらい、雰囲気がきれいで切ない。
期待した通りの気分にしてくれます。

表題作が前後編の扱い。
「恋人を亡くす話」はハードルが高い、とはご本人の後書き。
私も実は、恋人を亡くす話には不当なほど点の辛い読者なんですが、
これは気にならなかった。延々と身も世もなく泣き崩れるような話ではないし。
展開はねー。いまいちリアリティに欠けるかもしれないですが。

加害者に近い五十嵐くんの空虚な孤独が、ブラックホール並であるらしいのが、
けっこう身に迫ってくるみたいで怖かった。すごいマイナスオーラ。
で、それが彼の魅力のように感じさせることに成功してるのが、スゴイと思う。
「一生そばにいて責め続ける」という選択肢も、
アリなんじゃないかと思えてしまうほど。
五十嵐くんみたいな人と関わったら、私は深入りして身を滅ぼしそうです。
身じゃなくて、精神的に、か。

あと、短編2本。
「冬の動物園」と「野ばら」
私は表題作が一番好きですが、「野ばら」の評判が良いみたいですね。
高校生の、淡いけどラストが突き刺さるように切ないラブストーリー。
年代の近い方は、こちらが良いかも。
by michiko0604 | 2010-08-24 20:40 | | Trackback