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ブレイブ・ストーリー

うーむ、何から書こう。たくさん本を読みました。
なるべく順番に。

DVD「ブレイブ・ストーリー」
映画好きの友人から、公開時に「ゲド戦記よりはマシ」という微妙な評価を聞いていたが、
そちらをまだ観ていないので比較はできないものの、まぁ、何というか。
「お休みだから、家族イベントとして映画でも観に行こう」という習慣のある方には、
つまりファミリームービーとしては、きっとまずまずなのではないかと。
絵もキレイだったし、美形キャラもかっこよかったし話もそれなりに落ちがついて。
松たか子は声優さんのように上手だったし、その道のプロの方は全然出てなくて、
お笑い芸人だの原作者の宮部さんだの、京極夏彦まで出ててクレジットで笑ったが、
誰かが特に下手糞で許せない、とかそういうのはなかった。
大泉洋は、好きで期待してた分、なんか良さが出てなくてちょっと残念だったけど。

ただ、正直、家で一人で観ていて「今この時の、私の時間は何だろう。無駄かも。ダメかも」
・・というネガティブな感覚がよぎったことも事実。
おもしろいかつまんないか、純粋に個人的嗜好で行けば、つまんなかったです。
これを観たことで何かがどうなるかというと、別になんでもない。時間の無駄ギリギリ。
100点満点で49点くらいかね。話題の映画を観たという達成感で、それ。
娘と一緒に観るべきだったかもしれない。そしたら付加価値でプラスに行ったかも。

小説「ブレイブ・ストーリー」
読んだのは結構前だけど、これも正直言って、宮部作品としても冒険小説としても、
今イチやなぁ、と思ってた。自分がRPGやんないせいもあるかもしれないけど。
冒険が始まってから、いろんなイベントをクリアして経験値を上げていくわけだけど、
なんかどれも、大して胸躍るエピソードじゃなかった。
こういう話があってもいいけど、別になくてもいいじゃん?みたいな。どれもこれも。
勇者になってからのワタルには、結局全然感情移入もできないままだったし、
比較的魅力的なキャラとして設定されていたはずのミツルの、
最後の扱いはいくらなんでもひどすぎるんじゃないだろうか。救いも何もないし。
その点では映画は真逆で、甘すぎだと思ったけど。参加するだけでクリアかよ?みたいな。
ワタルの願いは叶ってないのに。叶ってないですよね?あれは(笑)。

それでもこれについて書きたかったのは、冒険世界に入る前のワタルの不幸が、
宮部作品本領発揮で、もんのすごくリアルで、それだけは胸にキタから。
ミツルに起こったことのほうが、不幸レベルははるかに上かも知れないけど、
そちらは詳細に描写されなかったこともあるし、出来事が大きすぎて遠かった。
ワタルに起こったことは、そんなに珍しくもないことかも知れないだけに、
すっぽりとシンクロしてしまって参った。かなりダメージ食らった。

映画ではそのへんはさらっと流されていて、それはそれでいいと思う。
原作の文章は、全然激してないのに執拗な描写で、どんどん追い詰められてしまう。
お父さんの恋人が家にやって来て、いろんなひどいことを言い募って行く場面、
お母さんに対する憎しみとか自分とお父さんとの愛の深さとか、
新しい赤ちゃんのこととか、それらみんな、単にひどいだけでなく
納得せざるを得ない理由があるから、お父さんの裏切りだけでなく
お母さんの絶望も沁みて来て、こどもの心は張り裂けるのではないかと思えた。怖かった。
今の自分は親だから、「親」にとっての最大の不幸は子どもを失うことだし、
あるいは若い人にとっては、恋人を失うことが最大かもしれない。
でも子どもにとっては、親を失う、家庭を失うことが最大級なのではなかろうか。

自分の親は、まぁいろいろあっても仲が良いほうだったと思うし、今も結構睦まじい。
それでも若いときには大喧嘩することもあって、争う大声を聞きながら
ふとんの中で涙が止まらなかった、あの時のこの世の終り感のフラッシュバック。
ワタルと一緒に、自分もベッドの下に潜って現実から逃れるしかなかった。
少なくとも、彼が異世界に飛び込んで運命を変えたい、と強く願うことになる、
その気持ちだけは、ものすごくよく理解できた。ベルセルクばりの大不幸。
前巻の半分以上を費やして語られたこの前フリだけで、凡書よりは値打ちあると思いました。
by michiko0604 | 2007-01-29 20:58 | | Trackback