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小説「光ってみえるもの、あれは」 川上弘美

母親と祖母と3人で暮らしている、ナイーブな高1の男の子の物語。
特別な大事件は起きないが、その内面にとっては重要ないくつかの出来事が、
引用される美しい詩や歌や俳句とともに、情感豊かに語られていく。
ちゃんと丁寧に端正につくられていて、独りよがりではなく、読みやすい。
とでも言えばいいか。

こういう系の話は好きで結構読むし、
江国香織さんや島本理生さんも系統としてかぶるところがあると思うが、
何故か最初は、息苦しくて読むのがしんどかった。単純につまんなくてと言ってもいいが。
どうなのかな、よくわからない。途中だけど読まずに返しちゃおうかとも思った。
でも、国語教師のキタガーくんが登場したあたりからおもしろくなってきて、
後半はわりと一気に読めたし、自分も南の島に行きたくなった。
それだけでまぁ、読んだ価値はあるほうか。

いくらなんでも、何もしないにもほどがある長期休暇だけども、
そこで彼にとっての人生の一大事、友情と恋愛問題に大きな転機がある。
そして最終的には、家族とのかかわりにも、でっかい転換期となった。

というような話なのだが、なんか、よくわからないトゲが、自分の中に残ったのは何故だ。
少なくとも後半部分は楽しんで読んだはずなのだが、読み終わって微妙な不快感。
私は、この作品が嫌いだ。そういうことなのだろうか。でもその理由がわからない。
何がしか、不愉快な部分でフラッシュバックさせられだのだろうか。
例えば、いろいろな些細なことを不快に感じていた10代の頃とか。
それらが、自分は結局解決できずに飲み込むだけだったのに、
これは物語だから、なんということもなくそれなりにおさまりがついてしまう。
それが気に入らなかったのだとしたら、それは作品に力があるということだ。
だってそんなことを言ってたら、たいていの本読めやしないし映画も見られん。
自分の痛む部分にまで届くほど、自覚もないまま深く入り込まれたのだとしたら、
それは不覚でもあり、脱帽でもある。そして、そんなヤツは嫌いだ。

なんとか理由をつけてみようとしたが、どうも当たってないな。
かするくらいはしてるかもしれないけど。それほどまでのことではないように思う。
オチがつかないが、ちょっとこれ以上突き詰めても凹むような気がするので、
この項終了ということに。
by michiko0604 | 2007-03-15 20:22 | | Trackback