人気ブログランキング | 話題のタグを見る

小説「用心棒日月抄」 藤沢周平 

第4シリーズまであるのだが、楽しくて一気に読んでしまった。
読んでる間は幸せだったのだが、終わってしまうとしーんと寂しい。
シリーズものの宿命だなー。ちょっと少しの間、放心してしまってました。

シリーズは小説新潮での連載で、開始時は私は小学生だったっぽい。
当時はおそらくうちでは小説新潮を買っていて、
自分も、中学生くらいになるとこっそり手に取り(一応禁止されていたような)、
時代小説は読まなかったと思うが、森村誠一とか田辺聖子とか、
ちょっとヤバイが西村寿行の作品が載っていると拾って読んでいたような記憶がある。
そう思うと、中学生で読んだ短編集が藤沢作品だった可能性も再浮上だな。
まぁ、この勢いだと全作品読破に挑戦するかもしれないので、
いつかそこらへんもはっきりするかもしれない。

「よろずや平四郎」と兄弟作品とも言われているらしいが、
やはりこちらの方が評価が上なのは仕方ないかも、と思った。
いくつも仕掛けがからみあった構成が豪華だし、全体に明るくても緊迫感に溢れ、
主人公のヒーロー度も高い。青江又八郎は、普通にかっこよく描かれてる。モテるし。
特にこの第一シリーズは、有名な忠臣蔵を外野から見た様子が新鮮でおもしろかったし
登場人物もみんな魅力的で、主人公の脱藩から職場復帰までの顛末も興味深く、
ぎりぎりの生活を支える用心棒稼業を通じて透ける、いろんな人の暮らしの事情も、
ひとつひとつ丁寧に描かれて、幾重にも味わい深い。

しかし、平四郎が、とにもかくにも裕福な実家があって、
食い詰めても最後には受け皿があり、たまには小遣いも貰って気楽なのに比べて、
又八郎の崖っぷちぶりはシャレにならないので、
小心者の主婦であるカナデは、いつもはらはらと心配してしまいましたよ。
米がもうなくて、かきあつめても粥二日分しかない、とか。どうすんだよ(汗
腹が減りすぎて足元が定まらず、敵にどこか斬られてしまうとか、
ご飯くらいちゃんと食えよ~とか、せつなくなってしまうよ。作者の思う壺だ。
だから、割と頻繁に登場する食事の場面に、又八郎と一緒に、幸せになっちゃいました。
ますます作者の思う壺。
この時期は我が家でも、つい和食率が高くなっちゃったかもしれんですわ。
塩鮭等の焼き魚に大根おろし、納豆、味噌汁に漬物に炊きたてご飯、熱いお茶。
この世で一番美味いもののひとつでしょう。
by michiko0604 | 2007-04-17 23:21 | | Trackback