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小説「容疑者Xの献身」 東野圭吾

これが直木賞受賞作だったんですね(今更)。
さすがに見覚えのあった題名以外は、ほぼ予備知識ナシで臨んでみました。
読みやすく、わかりやすくおもしろかったです。
トリックも構成も文体も手堅くて、するすると最後まで引っ張られました。
ミステリーを読んだ満足感としては、ほぼ満点と思われ。

東野作品は常々平均点が高く、上手いな~と感じさせられることが多いけど、
感動するとか入れ込んじゃうとか、影響を受けるようなことはあんまりないんですよね。
キャラクターに、あんまり感情移入できないことが多いせいかもしれない。
こういう人は好きだとか嫌いだとか、それ以前に、お話の中の人としか思えない。
だからいつも、自分にとっては時間潰しの域を出ないことが多いんだけど、
この作品は、ちょっと良かったです。来ないと思ってたものが、来た。
つまりラストで、ちょっとジーンと来ちゃった。不覚かな?(笑)。

不遇の天才数学者の、おそらくは生涯ただ一度の真摯な恋。
人はこれほど深く他者を愛せるのか、というような煽りは、少々面映いけれども。
トリックはさすがによくできていて、難解すぎはしない問題を解いていく醍醐味。
犯行時間をずらすのが主目的なんだよな?とか、
ホームレスをどっかで使ってるよね?とか、断片的には推量できるけど、
最後に全てのピースが繋がっていくカタルシス、楽しませていただきました。

なんでそこまで彼女らに思い入れることになったのか、それだけがちょっと。
それ以外が、きちんと計算して設計図に書かれた理系の展開だったから、
唯一無二で絶大な動機である、その深い愛情にも、
なんかわかりやすく納得させられる理由付けがあるんかと思ってたんだけど、
まさに自殺しようとしていたところに現れて、その目が綺麗だった、とか。
いきなりそこだけどーんと情緒的な文系展開になったので拍子抜けしたかも。
いや、それはそれでいいんですけどね。まさにそれを狙ってたのかもしれませんが。

物理学者の湯川さんも魅力的。と思ったら、この人のシリーズがあるんですね。
これは座長を張れるだけの存在感があるかもしれません。
それを追っかけて読み続けてみよう、というだけの愛は、湧きませんでしたけど。
でもご縁があったらまたお会いしたいですね。その程度には。
by michiko0604 | 2007-07-11 00:53 | | Trackback