小説「ミサイルマン」 平山夢明短編集

図書館に、平山夢明入れてくださいって頼む人、誰なんだろ(笑
おかげで私もまたご相伴に預かることができた。

「ソウ」と関連付けて考えていたのは、まぁ単純にホラー系つながりだってことが大きいけど、
「ソウ」が「ホラーが苦手な人も、あえて乗り越えて鑑賞する値打ちのある映画」
という言葉で賞賛されてるのを聞いて、平山夢明もそれに通じるように思ったから。
と言っても、苦手な人、嫌いな人は、やっぱりやめたほうがいいかも。
「特にホラーが好きってわけじゃないけど読書は好き」くらいだったら、薦めたい。
「言葉」に殴り倒され、胸倉つかまれるような体験。それが意外に快感。危。

出世作「横メルカトル」よりはグロさは薄いと思うが、やっぱり痛くてキモくて臭い七つの短編。
どこかしかに超常現象が織り込まれた、ある種のファンタジーだというのも共通項か。
そして、おぞましくて気持ち悪いのだけど、全ての作品に、人と人を結ぶ愛があります。
(平山作品で、愛なんて手垢ついた言葉使っちゃって、ファンの方ごめんなさい。)
あるいはその分脇が甘くなり、ホラーの洗練という点で一段さがってしまうのしれないけど、
私は、前作よりもこちらが好き。読んでぐったりしたのは同じだけど。
平山作品に触れることで喚起される独特の感覚が自分の中にあって、
それがより濃く、豊穣で心地よかった。
でもそれは、ある程度のダメージとともにもたらされるものでもある。

「テロルの創世」
近未来SF仕立てで、一番グロくない。後味も悪くなく、優しく、読みやすい。
ちょっとだけスプラッタ場面もあるけど、必然性はあんまりないし。
長編に向かう導入部のようにも読めて、短編一本じゃもったいない感じだけど、
設定自体はありふれてるものかもしれない。
既成の骨組みを借りて、強烈な独自の世界観を肉付けしていってるのか。

「Necksucker Blues」
個人的に、一番ダメージ食らった話。一番悪趣味ですよねぇ?しかもわざと(笑
体質改善のためにミスター・G(謎)をいっぱい食べるリアルさが・・・ぐはぁ。
これだけは、なんだかあんまり救いもないし。
他の作品は、身もふたもないバッドエンドっていうのはなかったような気がする。

「けだもの」
狼男の話。悲哀とか切なさとか、けっこうオーソドックスな異形のドラマ。
ラストシーンはラヴです(ぇ)。
いや、でもそれを言うなら、すべてのラストシーンがラヴだけど。

「枷」
一番、平山作品色が濃いと思う。一番グロくてエグくて痛いのだが、名作と思う。
拷問のための拷問なんて、性描写と同じで最後にはマンネリになってしまうんじゃないか。
つまり全てはシチュエーション勝負。素晴らしい。こんなんで最後に感動が来るとは。

「それでもおまえは俺のハニー」
これは、グロいとこはそんなにはない方かと。
小道具がちょっと斬新な、異世界への扉。これも比較的わかりやすいラヴ。

「或る彼岸の接近」
ちょっと異色に感じた。めずらしく心理戦だったせいかしら。
少しずつじわじわとタメが長いので、これは好みが別れるかも。

「ミサイルマン」
平山作品の特色のひとつ、不謹慎な悪ふざけが冴え渡って笑えた。
出会い系で引っ掛けた女を次々無造作に殺していく、
とんでもない若者二人の物語なんだけど、青春小説のようにポップでキュート(何)。
彼ら二人のやりとりが洒落てて、「メルキオール」の12を思い出した。
最後にはよくできた映画のように、なんか妙にさわやかに終わるし。

という七編です。時間が過ぎちゃってもちゃんと書きたかったので、良かった。
慣れたせいか、横メルカトルのときよりもレビューすることでは消耗しなかった。
今はもう、あまりゲテモノとは思わなくなった。
汚泥の奥に、強い光の金の粒を内包した作品群。
万人向けではないかもしれないけど、「生理的にダメ」とかでなかったら、
よろしければお試しください
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by michiko0604 | 2007-12-14 01:07 | | Trackback | Comments(0)