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小説「ルパンの消息」 横山秀夫

幻の処女作だったそうだ。長く単行本化されなかったらしい。

味付けも内容も、めちゃくちゃ濃かった。満艦飾というか大盤振る舞いというか。
盛りだくさんを越えて、詰め込みすぎなんじゃ・・と思ったくらい。
このネタとトリックと登場人物、上手く分ければ長編3本分くらいになるんじゃん?
でも、これらを惜しげもなく使ってしまっても全く大丈夫なくらい、
この人は滾々とアイデアが湧き出してくるんだろうなぁ。
あんなにもたくさんの短編を書いて、それがどれもハズレなしというのは驚異。
その天才の原点、堪能させていただきました。

15年前、自殺として処理された女教師の転落死が、
時効前日に、他殺の疑い濃厚という告発がなされる。
当時、3人の高校生が計画した「ルパン作戦」とあの三億円事件まで絡み合って、
数々の謎が解き明かされていく長い一日の物語。

山のような細かい伏線が、どんどん張られてはどんどん解かれていく。
当時の高校生の一人、喜多が、一応主人公といえるんだろうけど、
べらぼうな数の登場人物に、少しずつでも全員ドラマが添えられていて、
その多彩な芸の細かさには全くもって脱帽するばかり。
いや、これはちょっと類型すぎなんじゃ・・とか、ちょっと都合よすぎ・・・とか、
若干、読んでて恥ずかしくなった「おいおい」な部分もあったんだが、
筋立てがにぎやかなので、忙しくて細かいことに突っ込んでいられない(笑)。
だからもう、いいでしょうそこらへんはそういうことで・・と納得させられちゃう。

洗練、というわけには行きませんが、
大衆娯楽小説のツボを押さえたエンターテインメント。おもしろかったです。
by michiko0604 | 2008-02-02 23:45 | | Trackback