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小説「荒野」 桜庭一樹

というわけで、東京単独行のお供として無聊を慰めていただいた本。
まぁ、簡単に。

少女小説でした。
奔放な女性関係を芸(?)のこやしにしているらしい、「蜻蛉のような」性愛小説家の父をもった、
山野内荒野という女の子の、12歳から16歳にいたるまでの、浅い青春の日々。ですか。

なんかもう、その微妙な時期がフラッシュバックしてくるような濃密さで、
なまなましいというか、むしろなまぐさいほどの気恥ずかしいリアルさ。
こういうのが好きな人には、たまらんような名作なんだろうなと思います。
いや、ほんとに。この作者独特のせりふ回しや雰囲気もね。
みずみずしい、という言葉で賞賛されても当然なんでしょう。
悪くはなかったです。でもすいません、良くもなかった。

和風の容姿で、父親の影響で接触恐怖症気味で、感受性は豊かだけど早熟ではない、
むしろ幼さを強く残したおとなしい荒野。でも巨乳(笑)。
そんな彼女にスレスレに近づくオトナの世界は、順当だったり唐突だったり。
父親の周囲に濃く立ち込める情事の気配とか、愛人たちとか、
いちおうの勝利を収めて再婚し、義母となる人との距離感、とか。
そしてその人の連れ子(同じクラス・・・・)との、
少女マンガ的には意外とオーソドックスかもしれない恋愛の行方、とかね。

12歳、13歳、14歳と、少しずつ変化していく中で、
些少なのに明確に書き分けられる差異の鮮やかさは見事かもしれない。
ああ、でもごめん、やっぱり苦手な部類ですな。

灰谷健次郎の「少女の器」を思い出したが、あれよりも苦手に感じると言うのは、
それこそが作者の手腕ってことなのかも知れないけど、
まぁね、とにかく際どい所で恥ずかしさと痛さが勝ってしまって、個人的にはもうひとつ、でした。
ごめんなさい(三回目)。
by michiko0604 | 2009-05-08 01:40 | | Trackback