カテゴリ:本( 202 )

「あの日」 小保方晴子

GW中に読んだ本。

職場の人に「おもしろかったから」と無理やり貸された。
読まなくてもいいから、感想聞いたりしないから是非、と。なんでそこまで推すのか。
それは冬のことでしたが、私はなかなか興味が湧かなくて長らく放置。
さすがにそろそろ返そうと思い、GWに仕方なく読む。

思いのほか面白かった。読み物として充分に。
新しいこと、知りたかったことを少し知れたし、不覚にも響く部分もあった。


前半は、生命科学に興味を持った、ちょっと不思議なかわいい女の子が、
勉強したりがんばったりひらめいたり、サボったりしくじったり浮いちゃったり。
それでも夢と希望に満ちて大学に進み院に進み、だんだんステップアップして、
道が開けて、アイデアと研究が偉い学者の目に留まり、協力してもらい、
権威ある雑誌に認められて、世紀の大発見としてまばゆいスポットライトが当たるまで。
サクセスストーリーとして、ふつうに楽しく読めました。

最初の発表の前の夜、替え玉付きでラーメンを食べたので、
会見の時は顔がパンパンでテカテカだった、なんて描写もつい笑っちゃった。
確かに、あの時はめっちゃツヤツヤしてたなぁ、と思い出して。

だがしかし、研究の説明でさらっと触れられる、
背中に人間の耳が生えた「バカンティマウス」には衝撃。怖すぎ。
何もなかったところに細胞を植えて、育てて何かをつくりだす・・
というのが、つまりES細胞とかiPS細胞の基本のはじまりなんだろうから、
それが出来たのはスゴイことであって大成功で大拍手なんだろう・・けど・・
一般人にとっては、なんかすごいマッドでホラーな感じで、ドクター何とかの島みたいで、
背筋が凍りました・・。めっちゃ怖いです。
いや・・批判じゃないですけど。仕方ないことですけど。ありがたいことなのだと思いますけど。
自分らが肉を食うために、どこかで屠殺が行われているのと同じように。

小保方さんが実験の仕方を少し変えて、マウスに致命傷を与えずに細胞を切りとることに成功し、
「生きてね」と両手で包んでお願いした、というような場面で、(うろ覚えだが)
欺瞞だ気休めだ、どのみちマウスは苦しみ、やがて死ぬ・・とも思い、
それでもなお、少し胸を打たれたり。
いや、感傷的な話じゃなく、マウスが生きることで、続けられる実験がある、ということなんだけど。

研究が人の目を引き始めて評価があがるにつれ、いろんな人の手が加わり、
少しずつ自分の手を離れ、やりたかったことと違っていってしまう不安と不穏も上手に書かれていた。
その後の突然の大転落と悲劇は、多くの人が知っているとおりのこと。

後半は、地獄のような日々のリアルで詳細な血を吐く叫び。

あのように時の人となり、世間の耳目と異常な大バッシングを受けた人の苦しみが、
まことに生々しく痛ましく、読み手を引きずり込む切実さで訴えかけてきます。
あまりにも気の毒で「かわいそうに」と思わざるを得ないし、ヒドイなと沁みるし、
大しておぼちゃん自身には興味なかったのに、感情移入してちょっと涙目になっちった。
けっこうこれは、人を動かす力のある危ない本ですね。

私が一番知りたいと思っていたこと、「STAP細胞はあるのかないのか」についても、
少しだけ新しい情報があり、それで私は半分くらいは納得しました。
今でも彼女が「STAP細胞はある」と信じているのであろうことにも合点が行った。

立派な学者さんたちの検証実験で「細胞はない」という最終結論になっていましたが、
それは何ていうか「このレシピでケーキができなかったから、この新発見の粉は使えない」
みたいなことだったのかな?と思った。
小保方さんが発見したのは新しい粉であって、それはまだ「ケーキが出来る可能性」でしかなかった。
若山先生だけが「自分はこの粉を使ってケーキが作れた」と発表し、
でもそれが成功したのは若山先生しか持っていない特別な砂糖を使ったからであって、
再現実験にはその砂糖は貸さない、だからケーキはできなくても当然。事実できなかった。
だから粉も全否定された。
だいたいこんな成り行きだった、と彼女は言いたいのかもしれない。
世間はSTAP細胞を「ケーキ」と定義しているが、自分は「粉」だと思ってる。
だから、ケーキができなかったからと言って、新発見は否定されない。

がんばって庶民の頭で理解しようとしたのでこんな駄例になってしまったが、
自分としてはこんな感じで、小保方さんの気持ちが、前ほど理解不能ではなくなった。
STAP細胞は、もしかしたらあるかもしれない。ひとつの小さな可能性として。
証明はできていないが。勘違いかもしれないが。

若山先生が功を焦ってスタンドプレイをしたあげくに責任を逃れてバックレたのか、
反対に、メンヘラビッチに騙されて巻き添えを食らい、傷を負いつつも良心で告発したのか、
どっちに感情移入するかで景色は真逆になる。騙し絵みたい。


笹井先生のこと。彼が痛ましい自死をされたとき、
「生きて検証してほしかった」と私もどこかで書いたけれども、
それはほんと、遠い外野の無責任な無茶振りだったのだな、とわかりました。

笹井先生は、研究の中心に居たわけではなく、突出したセンスのデザイナーだったんですね。
おしゃれなコーディネートをしてあげただけだった。
それなのにあんな風に石で打たれて理不尽な屈辱にまみれて、逃げることはできず、
なんとか石つぶてを避けつつ事態を収束させようとして、限界を超えて病んでいったんですね・・。
輝かしい才能をお持ちだったのに、ほんとうにお気の毒だし、もったいないことだった。
なんでこうなってしまったんだろうか。

もちろん、この本をそのまま信じるわけではないですけど、興味深い内容だったし、
反論を封じられてきた彼女の「言い訳」と「不満」を、どんな形でも聞けたのはよかった。
今まで一方的過ぎた。そこまで悪いことしたのか?何をしたというのか?
とは、当時から疑問だった。

都合のいいことしか書いてない、疑問に答えてない、読者をミスリードしている・・
虚言癖のサイコである、精神疾患系案件である、というような意見もあるでしょう。
そこはわからない。実はそうなのかもしれません。

でも、そうだとしてさえも、あんな目にあって当然、ということではないでしょう。

名指しで批判されてる人もいるので、反論があるのか、
それとももう延焼を恐れて黙殺になるのか、
STAP細胞はタブーとして葬られてしまうのか。
まぁ、それならそれで仕方ないです。若返りも不死も、私は望んでいません。

ただ、世論の無責任な悪意と祭りはほんとうにクソだな、ということはわかりました。

意外なことに、読んで損のない本でした。
流行りというだけで却って引いてしまっていたので、偏見でした。
同僚には感謝したいと思います。

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by michiko0604 | 2016-05-15 22:32 | | Trackback | Comments(0)

9編からなる短編集でした。
予想以上に、たいへん面白かった。
凄いんだけど、まほかる。

主人公はみんな、孤独な女の人。
ほんの些細な出来事や侵入者から、日常に狂気が混じっていくような。

冒頭の「林檎曼荼羅」が、一番まほかるっぽかった。グロくて。
全編こんな感じか、さすがだなまほかる、とと思っていたらそんなこともなく、
そのあとは、らしさは残したまま、比較的ライトな感じで読みやすい。
それでいて全部傑作。それぞれ「おお・・」と唸らされる芯があった。

「レイピスト」と「沼毛虫」はラブストーリーだと思う。綺麗と言ってもいいくらい。
「テンガロンハット」「普通じゃない」は、怖いんだけど笑える。シュルシュル。
「TAKO」はエロいがオチが良い。「エトワール」はエロくはないがオチが良い。
「ヤモリ」「クモキリソウ」は切ない。

怖いんだけど、ゾッとするんだけど、まほかるには愛があるよな。
きれいな愛じゃなく、女の情念みたいなものだとしても、ひとすじ添えるもの。

お見事でした。ありがとうございました。
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by michiko0604 | 2013-04-07 22:37 | | Trackback | Comments(0)

読んでいて、たぶん実在の事件をモチーフにしてるんだろうなと思ったが、
ほかの作品のようにはすぐに思いつかず、読了後に調べたら、
一億円横領女子行員「伊藤素子」の名前に聞き覚えがあった。ああ、あったなそんな事件。
で、いつもながら、事件よりも小説は、切なくてやさしい。

冒頭は、国外逃亡中のヒロイン・リカの薄い独白から。
その後、彼女にかかわった3人の友人から見た薄いリカ像が重なり、
リカの少女時代からの物語がはじまる。
それぞれに、お金にからんだ辛い状況がからんで、厚みが加わる。

リカの行動は、「男に貢ぐために横領」というシンプルさでは語れなくて、
どちらかという自己実現、自分探しに近かったような気もした。
欲しかったのが、あの早朝の駅で感じた至幸感、万能感なのだとしたら、
一瞬で雲散霧消するようなものだとしても、彼女はそれを手に入れたということか。

夫の言動への僅かな引っ掛かりから、
専業主婦だったリカは就活をしてパートに出始め、認められてフルタイムに移行していくんだけど、
その過程がとてもリアルで自分にとって興味深く、面白かった。
こうして顧客に愛されて成績を上げ、会社にとって有益な人材になっていく、
それだけじゃダメだったのかなぁ、と、
この後確実にみんなの信頼を裏切っていくことが残念だった。

一線を越えた後の転落は、蟻地獄のよう。怖い。
でも、暗黒ではないと思う。
友人三人のお金の不幸も、悲しいけれども全てが絶望ではないと思いたい。

「私を見つけて」「ここから出して」

いつもながら、角田氏は上手。
どんどん引き込まれて読まされる。素晴らしい。

お薦めですね。
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by michiko0604 | 2013-04-07 22:15 | | Trackback | Comments(0)

いまさらですが、何年か前に超話題になったビッグネーム。
メモにも書いた通り、最初の3冊を文庫で買ったが、
さすがにブームも一段落して図書館でも見かけるようになったので、
のこり半分、というか2巻と3巻は借りた。
ひさしぶりに、楽しい読書の時間を過ごした・・・のだが。うむ。

すいません、褒めなくて。

けっこう夢中で読んでるとき、夫が、
「大久保佳代子が光浦靖子の彼氏を取った(逆かも知れない)」
という主旨の話を嬉しそうにし始めて、ちょっと苛々しながら我慢して聞いてやったのだが、
やっと一段落したと思われたら、
「そのあと大久保は(光浦かもしれない)彼氏できないらしい」という主旨が続きそうになり、
どうでもよすぎて、耐えかねて、
「悪いけど、アタシその話興味ないわ」とぶった切り、
ああそう、すいませんね、と夫がややムッとして黙る、ということがありました。
夫はたぶん、その話がすごく面白かったんでしょう、だから話してくれようとしたんでしょうね。
でも、そういう笑えるツボのポイントが、けっこうズレてるんですよね・・。

なんでこんな話を入れるかというと、
夫婦の会話を犠牲にしてまで(ってほどのことでもないけど)読み続けたのに、
終わってみると、大久保と光浦の恋愛話と同じくらい、
天吾と青豆の物語は、私にとって関係ないものになってしまっていました、という、
わかりやすく残念な結論だったからです・・。

2巻までの豊潤さ、得難さ、透明さは、いつの間に褪せたのだろうか。
よくわからん。

青豆が非常階段を降りて月が二つある世界に迷い込んだように、
私も、どこかで切り替わって、香り高い1Q84から違う場所に落ち込んだようだ。
なんか独りよがりな、底浅い通俗小説に。こまった。

青豆の身体の変化。たぶんここからですね、ついて行けなくなった。
世界からこぼれ落ちました。脱落ということです。
納得行かなくて、すべての展開に厚みがなくなった。

おそらく天吾の子。間違いない。→なんでですか?
おそらくドウタには意思がない(うろ覚え)→なんでそんなこと知ってるんですか?
たぶん、とかおそらく、とか多くない?(byマチ@ハンター×ハンター)

そこいらへんを自然に納得することが出来なくなった。
そうなってくると、もうぜんぜんダメでした。

ふかえりは一番好きなキャラクターで、彼女に会いたくて読んでた時間もあったが、
終盤急速に存在感が薄くなっていった。
「美しい少女」「17歳の美しい少女」としつこく繰り返されるほどに、
なんだか紙と呪で出来た「式」みたいな、ただの薄気味悪いつくりものになっていく。

青豆との関係性を神聖化するためなのか?
ふかえりとのセックスについて、言い訳しすぎ。
性的なものではない、お互いそういうんではなかった、云々かんぬん。
大事なことだから2回言うとか、そういう類か?

3巻で一番魅力的だったキャラクターは牛河でしょうか、
唯一血の通った人間に思えて感情移入せざるを得なかった彼は、
たいへん無残な、苦しい死を迎える。
これは物語の成り行きだから、文句を言うようなことではないけれども、
不快な気持ちになったので、そこは書いておく。
コネのある殺人者は守られて生き延び、
自力で苦境を切り開こうとした市井の知恵者は、あえなく暴力に屈する。
何も殺さんでも(素)。
最後のあれが、一片の救いなのですか?彼の魂の一部は。
どれほどのもんだというんだ、空気さなぎが。
この時点で、空気さなぎを神聖視できていない自分は、脱落してんなぁと感じた。

NHKの集金人に、なんか恨みでもあるのか。
私だって別に、NHKの集金人が好きなわけじゃないが、
どっちかっていうと確かにヤだが、
彼らは彼らの仕事をしているのだから仕方ないでしょう。
何より、きちんとお金を払えば、彼らはもうイヤなことはしてこないですよ。
嫌がらせをすることが目的なんじゃないんだから。
信念を持って払わない人は、戦えばいいでしょう。それはそれで。
3巻の描写はひど過ぎるわ。

こうなるともう重箱の隅なんだけど、
個人的に、「つらい」「厳しい」「過酷」というニュアンスを、
「きつい」という言葉で表すのが、あんまり好きじゃないんです。
というか、違うな、嫌いではないけれども、あんまり端正な言葉だとは思ってない。
軽い、ふざけ気味、ネタ交じりみたいなときに、
「うわーキッツー」「それキツイねー」のように自分はつかうので、
真剣な場面で多用されることに違和感があったんだな。
1回や2回や3回だったら、形容詞のひとつとして流すけれども、
気にし始まるともう出てくるたびにイライラしてしまい、
最終的には10回くらい出て来たので(正確に数えてはいないが)、
それだけでもだいぶ気持ちが離れる原因のひとつになってしまった。
なんだろう、村上作品で、こんなところが引っかかった経験はなかった。
いつも、言葉の選び方もたいへん洗練されて感じたのに。
「語彙が貧弱」なんてかすめるような事態とは、対極だったのに。


ラストは、「良かったね」と自然に思いました。
読まなければ良かったというほどではない。

面白いかどうかわからないし、と思って読み始めたことを思えば、
充分面白かったです。わくわくさせられた時間も、たくさんあった。
タマルも好きでした。
ああいう人にしては、しゃべりすぎだけど。
ファンタジーだしね。

楽しかったのに、最後に薄くなってしまったことが残念、という話。
何もかも、計算された結果なら、それはそれで素晴らしい、脱帽、なのだが・・
読後感がいまいち、という結論は覆らないので、やっぱりいまいち。  
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by michiko0604 | 2013-02-13 01:00 | | Trackback | Comments(0)

読書メモ

ひさびさ。

・Another  綾辻行人

  内容ぜんぜん知らずに文庫を買いました。
  好きなブロガーさんが「一気読みした」とだけ褒めてたので。
  なので、中坊の学園ホラーだと知って軽くショックを受ける。

  アニメだ映画だでブームになってたんですね。それすら知らず。
  娘は大好きだそうです。ミサキメイがかわいいんだそうだ。
  アニメを見たら、綾波レイかと思いました。
  眼帯とか包帯に萌える人多いですよね。

  私にはいまひとつでした。すいません。
  いや、でも、面白いと思いますよ。それなりに。
  前半が進まなくてイライラしますけど。
  恒一って注意力散漫すぎだろ、もっと集中して謎について考えろよ、
  頭悪いんじゃないのか!?・・・みたいな感じで。



・猫鳴り  沼田まほかる
 
 なんか最近なにげに話題の作家さんらしいです。平積み。
 その中から、薄めのこの本でお試ししよう、と手に取りつつ、
 私はこれ読まないほうがいいんじゃないのかな。。と、割と濃く危惧も覚える。
 そして危惧はあたった。

 呼吸困難に陥る勢いの大号泣。
 えぐえぐとしゃくりあげながら、
 自分の猫にすがりつきつつ、何とかかんとか眠りにつけたという有様。
 ものすごくダメージを受け、消耗した。

 でも、傑作です。
 極端に猫好きな人でなく普通の人ならば、
 しみじみとした感動を覚えるのではないでしょうか。
 
 優しい話ではないですが、奥深いです。
 でも悲しいです。ううううう。
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by michiko0604 | 2012-02-11 00:58 | | Trackback | Comments(0)

読書メモ

・「隣人」 永井するみ

 初読みの作家さん。
 淡々と見えて、女の人のエゴと悪意がにじみ出る、ちょっと怖い短編集。
 ミステリーを軽くさらっと読みたいときに良いですね。上手に出来てて面白かった。
 気持ちはわかるけど、こんな簡単に人を殺すか?などと突っ込むのは野暮。
 冒頭の「隣人」、猫好きなので気持ちがわかる。殺しやしないけどな。
 猫ほどじゃないが、それ以降のお話も気持ちはわかる。だから充分。
 最近早逝なさってたんですね。合掌。
 また借りてみます。


・「あのとき始まったことのすべて」 中村航
 
 かなり好きな中村航氏の新作。作家チョイス。
 中学時代、クラスの班で一緒だった男女4人。
 そのランダムな組み分けの中で共有された、淡くみずみずしい浅い青春の日々と、
 10年後の彼らの等身大のリアル。
 別に何も目新しいことも劇的なこともない、ごく普通の誰かの日常なのに、
 せつなくて優しくてなつかしくてちょっと笑える、みんなの心に普遍化して沁みる。
 いつもながら、素敵なお話です。
 
 でも、ほかの中村作品に比べると、特に良くはないですな。
 悪くないけど、中村作品じゃなければ読まなかったかな、という位置で。


・「ほかならぬ人へ」 白石一文

 直木賞受賞作。とうとう名実とも大家になられましたか?
 内容としては、「どれくらいの愛情」に近いのだろうか。
 この世でただ一人の伴侶、ベターハーフを探すお話。
 相変わらず学歴とか容姿とかを大要素として織り込んでありますが、
 庶民の代表として日大を持ってくるくだりがちょっと笑える。
 白石作品としては、毒が薄いし読みやすいと思います。
 でも、好きな人には物足りなくないですかね。

 私としては、2本目の「かけがえのない人へ」の方が面白い。
 1本目の主人公は単なる頭の悪い人に見えて、特に感情移入ができないが、
 こちらのヒロインの歪み方と、相手方のキャラの濃さに独特の臭みがあって、
 このくらいでないと白石氏も書いててつまらないんじゃないか。
 エロ場面の話じゃないですよ。欠けた心がぶつかる痛みと温かみ。
 不快だけど何かが残る、私が白石作品に求めるものが、こちらの方が少し重い。


・「黄落」 佐江 衆一

 10何年か前に、かなり話題になったと思う。老親の介護の話。
 ずっと薄く気になってたが、ここへ来て
「読まねばなるまい」という謎の義務感が後押し。
 
 実話か。88歳の母と93歳の父を近居で看ていた初老の作家。
 老母が転倒して骨折し、平穏な日々は急転。やおら始まる介護の日々。
 リアルすぎてしんどい。でも現実の重みは圧倒的。
 
 献身的な妻への理不尽な苛立ち、両親への愛情と憎悪・嫌悪。
 認知症と思われていた母親の、最期の選択を誰も止めない。
 フィクションならば、こうはならないかもしれない。
 シャレにならなすぎて、ちょっとこれは結構落ちる。
 でも、目を逸らさないで向き合わなければいかんだろう。

 が、加速度的に悲惨になるかと思われた終盤、
 扱いにくい父親が意外にキュートに描かれて、
 ちょっとだけユーモラスに明るい色調になった気がするのは、
 それは彼らも何かが突き抜けたのか。
 ラスト1ページまで悲惨で危険でギリギリではあるのだが、
 どんな状況でもユーモアさえ残っていれば、
 首の皮一枚で踏みとどまれるのではないか、と、それを救いにするしかない。

 読んで楽しい本ではないですが、考えるヒントには満ちた益本。
 でも疲れたし、テンションは落ちた(苦笑)。頑張ろう。 
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by michiko0604 | 2011-02-17 16:01 | | Trackback | Comments(0)

スカイクロラ追記メモ

と言っても、もうそれほどは真剣に考えてはいないんですが。
楽しませてもらったなぁ、というたいへん好意的な気持ちで残っており、
解けない謎は謎でいいかな、とも思ってるんですが、まぁやっぱり、
「スカイ・イクリプス」の記事のあとに、少し考えたことを追記しておきます。


スカイクロラ世界に、クローンや記憶移植概念はありません。
という作者の公式発表があったらしいこと、いつだったか聞き及びました。
あらー、そうなんだ。で、ここを踏まえて、二つの仮説。
スカイクロラ内での時系列の矛盾は、今のところお手上げですが。


① あくまでもクローン説(ぉぃぉぃ笑

  クローンはないけど、「短期間で人間を再生させるクローン」というような、
  注釈がついていたような気がする。うろ覚え。

  ですので、カンナミは、あらかじめ用意されていたクサナギの予備。
  つまり綾波レイですな。

  ダウン・ツ・ヘヴンで出てきたカンナミが、初代と見る。
  (但し、クレイドゥ・ザ・スカイ以降のカンナミは、
   クサナギオリジナル)
  そのあたりから、長期計画が始まっていると見る。

  草薙水素というブランドが重要度を増す中で、
  大事にしたい組織側と戦い続けたい本人、その葛藤の解決策。
  「クサナギスイトが二人いれば」というカイの言葉もうっすらと根拠。

  そんなわけで、スカイクロラの二人はどっちもクサナギ、というのが、
  私の中で一番スッキリなので、できればこの説を採りたいな。


② スカイクロラのクサナギ=クリタ説

  潔くクローン説を捨てた場合、
  カンナミ=クサナギが確定である以上、クサナギはクリタと思われ。
  
  「クレイドゥ」はプロローグがクリタで本編クサナギ、は、そのまま。
  「イクリプス」でクリタが撃たれるとき、一緒にいたのはフーコではないので、
  フーコは病院から逃げたクリタを一度は匿うけど、
  一緒に逃げたのは別の子なんだと思います。このへんあやふやだが。

  プロローグ時点から別の子だったと思いたいが、
  ハスキーボイスの特徴をわざわざ出してるからフーコかなぁ。
  フーコはクリタと一緒には行かなくて、現状維持を選ぶけど、
  少しは彼らが羨ましくて、クサナギのときには少し深入りをする。
  ・・とまで言うと、個人的妄想になるかなぁ。

  性別の事は、そんなには気にならない。
  キルドレに戻る薬が、「男性ホルモン」だったなら、もっとわかりやすいが、
  これは自信ないですな。
  
  それでクリタ=クサナギは「クサナギブランド」を勤め上げ、
  フーコには恩義を感じていてお金を渡し、
  円満退社のあかつきには、彼女を訪ねていって、しあわせに暮らす。
  ああ、いいねぇ(笑

  これなら、フーコが「バス停で別れたじゃない」と言っても、
  「そうだっけ?」になることに筋が通る。
  バス停で別れたクサナギと、フーコが今見てるクサナギは別人だから。

  というわけで、心情的にはこっちも好き。


読み返して演算もしてみたわけではないです。
あとでやってみたら、「やっぱダメじゃん」になるかもだけど、
今この時点で、私としては、
「どっちも悪くないなぁ」と思っています、というメモでした。
やっぱり楽しい「スカイクロラ」。
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by michiko0604 | 2011-02-03 15:06 | | Trackback | Comments(0)

9月読書メモ

結局こういう形態になってしまいます(汗
3冊どれも、そんなには印象深くなくて、時間が経ってますます薄く。
悪くはなかったのですが。

・「少女」湊かなえ
  
  言わずと知れた時の人、「告白」の作家さん。
  高校生の女の子二人が、親友が自殺したという転校生の話を聞いて、
  人の死を間近で見たいという欲求にかられ、
  ひとりは老人ホームに、ひとりは小児病棟に通い始める。そして色々。

  「告白」は大変面白く読ませていただきましたが、これはそれほどでもなかった。
  いや、面白いと言えば面白いです。色々事件が起こるし、よく考えてあるし。
  でも、リアリティがあんまりない。携帯小説か、良くてラノベみたい。
  すべての登場人物がリンクしてて、パズルだと思えばいいのかもだけど、
  こんなにうまく繋がるわけないじゃん、ていう作り話感がヒシヒシ。
  登場人物も、みんな性格悪いしね。ひとりだけは落ち度なく、気の毒か。
  
  駄作ってほどじゃないが、わざわざ読むほどでもなかった。個人的には。


・「最後の息子」吉田修一
 
  「パレード」を読んで、ちょっと疲れたので再チャレ。
  中編3本。
  ゲイの恋人のヒモになってる青年の話。
  母親を天災で亡くした後、父と息子二人の家族の話。
  部活最後の大会に燃える高校生たちの、酸っぱい青春の話。

  スゲー簡単に書いてしまったが、まぁ、一言で言って純文学。
  言葉の選び方で、ちょっと「おっ」と思うようなセンスがあって、
  ザリッととがったような時があっても、生真面目で知的な文章でした。
  笑えるようなところがなくて肩凝りますが、好感は持てます。
   
  まだ「好き」ではないけど、もう少し読ませていただこうと思う。


・「あられもない祈り」島本理生
 
  好きな作家さんなんだけど、これはいまいちでしたね・・。
  なんだかさっぱりわからないんですもの。
  時系列も分かりづらいし、名前がないのも読みづらい。
  それが狙いなのかもしれないけど、散漫で疲れた。
  「あなた」の奥さんとの会話とか、奥さんへの気持ちとか、
  時折ドキッと刺さるような秀逸な描写もあるけど、単発でした。
  今までで一番しょうもなかった。

と、こんなところで。
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by michiko0604 | 2010-10-14 21:33 | | Trackback | Comments(0)

  甘く憂鬱な年頃(まんまか)。7人のアンソロジー。

  
  「あの八月の」角田光代

   やっぱり一番上手ですねー。青春ってたまらんですわ。
   痛くて恥ずかしくてしょうもなくて、いっぱいいっぱいで。
   大学生、狭い世界の中で、めっちゃ揉めてもつれる逃げ場ない恋愛。
   それを大人になって思い返すという、罰ゲーム並の七転八倒を鮮やかに。
   酸っぱすぎる(笑

  
  「クジラの彼」有川浩

   
   いやー、こういうの大好きです、私。きっとみんなも好きだ(何
   大直球じゃないですか。わかりやすくて胸キュンで最高に爽やか!
   しかも私は自衛隊も大好き。シリーズを読まねば!

  「涙の匂い」日向蓬

   存じ上げない作家さんでした。
   中学生視点の、とっても真面目な青春模様。切ないなー。
   女性好みのほんのりエロ風味を盛り込む作家さんらしいですが、
   やらしくはないし、汚くもないです。
   もう一作くらい、読ませていただいても良いかもですね。

  「ニート・ニート・ニート」三羽省吾

   まぁ、これもある意味直球です。
   まともに社会人をやれていない、うまくいかない同級生3人の、
   しょうもなくやけくそな逃避行。どうすんだよ君ら。
   若いなあとは思うが、もう若くもないぞ、とも思い、
   窮屈で大変だね、とも思う。共感するものでもないので、感想も薄いが。

  「ホテル・ジューシー」坂木司

   面倒見のいいお姉ちゃんが、自分のために時間とお金を使おう、と一念発起。
   遠くでバイトを始めるが、なんかどこでも貧乏くじっていうか、
   人の面倒をみる羽目に、みたいな。
   これも、大変だなぁと思うが、すいません最後まで他人事で。
   
  「辻斬りのように」桜庭一樹

   これは、「少女七竈と七人の可哀想な大人」の冒頭の章なので既読。
   これだけ読むと、呆気にとられるというか、突拍子もないが、
   彼女の行動にはちゃんとわかりやすく意味があると、
   本編まで読めば腑に落ちるので、ちょっと点が甘くなる。

  「夜は短し恋せよ乙女」森登美彦

   詩ですね(謎)。好きな人は好きでしょう。
   腰を入れて読みたい作家さんだが、もしかするとダメかもしんない。

収穫と言えるものもありましたが、面白さがわからんものもあり。
勿論いろんな味をつまめるのが、アンソロジーの良いとこです。  
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by michiko0604 | 2010-10-07 21:09 | | Trackback | Comments(0)

新聞連載小説だそうです。知りませんでしたが。

中流家庭を自認する、医師の娘で48歳国立大卒専業主婦の由美子は、
高校中退フリーターの20歳長男が悩みの種。
その息子がある日結婚相手として連れてきた玉緒は、
由美子にとって度しがたく許容範囲外の「下流」の家の子。
ある事件で正面から対立し、身も蓋もなく由美子に罵られた玉緒は、
「医者の娘がそんなに偉いなら、わたしが医者になります!」と宣言し、
医学部を目指して猛烈な受験勉強を開始するのでした。
そして後半はドラゴン桜。

漫画みたいな話でたいへんわかりやすく、読みやすくて面白いです。
これを痛快と読むか、ちょっと不快と読むかは、その人の価値観ですな。
たぶん前者が圧倒的多数なんだろうなと思いますが。

新聞の書評を読んで借りたので、由美子さぞかしムカつく女かと思ったら、
それほどまでには感じなかったですね、私は。だからちょっとかわいそうかな。
玉の輿願望が強い美人の娘は、共感できるところがゼロだったからいいけど(酷)。
由美子が爆発する「ある事件」には、たぶん私でもかなり怒ると思うので、
勿論言いすぎなんだけど、わかる気持ちもありました。
展開やオチも、予想通りだしそれで面白かったが、
溜飲が下がったっていうほどでもない、そんな立ち位置。
でも、由美子さん、まだ大丈夫だと思いますよ。まだ間に合うよ。
ダンナさんはきちんとした人だし、子どもたちだって、まだ。
でも、あのラストシーンは、変わらないってことなんですね(笑

美形で優しいが、徹底的に覇気がない息子の造形は興味深かった。
中退の何が悪いのか、フリーターのどこが問題なのか、それとも無問題なのか。
自分の頭で考えて、自分の言葉で理解したいし説明できるようでありたい。
だから「二人で働いて30万円もあって、充分暮らせるからこれ以上は要らない」
という息子の主張については、結構つきつめて考えてみたり。
息子の最後の選択だけがちょっぴり意外で、でも納得で、
覇気は皆無だけど馬鹿ではないんだなと思うと、尊重したくもなったり。
いやいや、やっぱりダメだろ、と思い直したり。

自分の価値観やらライフスタイルについても、
ほんのりと見つめ直してみたりして、いろいろと楽しめる本でした。

この話題は、心もち後を引くかも知れません。
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by michiko0604 | 2010-08-29 23:41 | | Trackback | Comments(0)