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「あの日」 小保方晴子

GW中に読んだ本。

職場の人に「おもしろかったから」と無理やり貸された。
読まなくてもいいから、感想聞いたりしないから是非、と。なんでそこまで推すのか。
それは冬のことでしたが、私はなかなか興味が湧かなくて長らく放置。
さすがにそろそろ返そうと思い、GWに仕方なく読む。

思いのほか面白かった。読み物として充分に。
新しいこと、知りたかったことを少し知れたし、不覚にも響く部分もあった。


前半は、生命科学に興味を持った、ちょっと不思議なかわいい女の子が、
勉強したりがんばったりひらめいたり、サボったりしくじったり浮いちゃったり。
それでも夢と希望に満ちて大学に進み院に進み、だんだんステップアップして、
道が開けて、アイデアと研究が偉い学者の目に留まり、協力してもらい、
権威ある雑誌に認められて、世紀の大発見としてまばゆいスポットライトが当たるまで。
サクセスストーリーとして、ふつうに楽しく読めました。

最初の発表の前の夜、替え玉付きでラーメンを食べたので、
会見の時は顔がパンパンでテカテカだった、なんて描写もつい笑っちゃった。
確かに、あの時はめっちゃツヤツヤしてたなぁ、と思い出して。

だがしかし、研究の説明でさらっと触れられる、
背中に人間の耳が生えた「バカンティマウス」には衝撃。怖すぎ。
何もなかったところに細胞を植えて、育てて何かをつくりだす・・
というのが、つまりES細胞とかiPS細胞の基本のはじまりなんだろうから、
それが出来たのはスゴイことであって大成功で大拍手なんだろう・・けど・・
一般人にとっては、なんかすごいマッドでホラーな感じで、ドクター何とかの島みたいで、
背筋が凍りました・・。めっちゃ怖いです。
いや・・批判じゃないですけど。仕方ないことですけど。ありがたいことなのだと思いますけど。
自分らが肉を食うために、どこかで屠殺が行われているのと同じように。

小保方さんが実験の仕方を少し変えて、マウスに致命傷を与えずに細胞を切りとることに成功し、
「生きてね」と両手で包んでお願いした、というような場面で、(うろ覚えだが)
欺瞞だ気休めだ、どのみちマウスは苦しみ、やがて死ぬ・・とも思い、
それでもなお、少し胸を打たれたり。
いや、感傷的な話じゃなく、マウスが生きることで、続けられる実験がある、ということなんだけど。

研究が人の目を引き始めて評価があがるにつれ、いろんな人の手が加わり、
少しずつ自分の手を離れ、やりたかったことと違っていってしまう不安と不穏も上手に書かれていた。
その後の突然の大転落と悲劇は、多くの人が知っているとおりのこと。

後半は、地獄のような日々のリアルで詳細な血を吐く叫び。

あのように時の人となり、世間の耳目と異常な大バッシングを受けた人の苦しみが、
まことに生々しく痛ましく、読み手を引きずり込む切実さで訴えかけてきます。
あまりにも気の毒で「かわいそうに」と思わざるを得ないし、ヒドイなと沁みるし、
大しておぼちゃん自身には興味なかったのに、感情移入してちょっと涙目になっちった。
けっこうこれは、人を動かす力のある危ない本ですね。

私が一番知りたいと思っていたこと、「STAP細胞はあるのかないのか」についても、
少しだけ新しい情報があり、それで私は半分くらいは納得しました。
今でも彼女が「STAP細胞はある」と信じているのであろうことにも合点が行った。

立派な学者さんたちの検証実験で「細胞はない」という最終結論になっていましたが、
それは何ていうか「このレシピでケーキができなかったから、この新発見の粉は使えない」
みたいなことだったのかな?と思った。
小保方さんが発見したのは新しい粉であって、それはまだ「ケーキが出来る可能性」でしかなかった。
若山先生だけが「自分はこの粉を使ってケーキが作れた」と発表し、
でもそれが成功したのは若山先生しか持っていない特別な砂糖を使ったからであって、
再現実験にはその砂糖は貸さない、だからケーキはできなくても当然。事実できなかった。
だから粉も全否定された。
だいたいこんな成り行きだった、と彼女は言いたいのかもしれない。
世間はSTAP細胞を「ケーキ」と定義しているが、自分は「粉」だと思ってる。
だから、ケーキができなかったからと言って、新発見は否定されない。

がんばって庶民の頭で理解しようとしたのでこんな駄例になってしまったが、
自分としてはこんな感じで、小保方さんの気持ちが、前ほど理解不能ではなくなった。
STAP細胞は、もしかしたらあるかもしれない。ひとつの小さな可能性として。
証明はできていないが。勘違いかもしれないが。

若山先生が功を焦ってスタンドプレイをしたあげくに責任を逃れてバックレたのか、
反対に、メンヘラビッチに騙されて巻き添えを食らい、傷を負いつつも良心で告発したのか、
どっちに感情移入するかで景色は真逆になる。騙し絵みたい。


笹井先生のこと。彼が痛ましい自死をされたとき、
「生きて検証してほしかった」と私もどこかで書いたけれども、
それはほんと、遠い外野の無責任な無茶振りだったのだな、とわかりました。

笹井先生は、研究の中心に居たわけではなく、突出したセンスのデザイナーだったんですね。
おしゃれなコーディネートをしてあげただけだった。
それなのにあんな風に石で打たれて理不尽な屈辱にまみれて、逃げることはできず、
なんとか石つぶてを避けつつ事態を収束させようとして、限界を超えて病んでいったんですね・・。
輝かしい才能をお持ちだったのに、ほんとうにお気の毒だし、もったいないことだった。
なんでこうなってしまったんだろうか。

もちろん、この本をそのまま信じるわけではないですけど、興味深い内容だったし、
反論を封じられてきた彼女の「言い訳」と「不満」を、どんな形でも聞けたのはよかった。
今まで一方的過ぎた。そこまで悪いことしたのか?何をしたというのか?
とは、当時から疑問だった。

都合のいいことしか書いてない、疑問に答えてない、読者をミスリードしている・・
虚言癖のサイコである、精神疾患系案件である、というような意見もあるでしょう。
そこはわからない。実はそうなのかもしれません。

でも、そうだとしてさえも、あんな目にあって当然、ということではないでしょう。

名指しで批判されてる人もいるので、反論があるのか、
それとももう延焼を恐れて黙殺になるのか、
STAP細胞はタブーとして葬られてしまうのか。
まぁ、それならそれで仕方ないです。若返りも不死も、私は望んでいません。

ただ、世論の無責任な悪意と祭りはほんとうにクソだな、ということはわかりました。

意外なことに、読んで損のない本でした。
流行りというだけで却って引いてしまっていたので、偏見でした。
同僚には感謝したいと思います。

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by michiko0604 | 2016-05-15 22:32 | | Trackback | Comments(0)

教育TVでア二メ化されて放送中だったことは、うっすら知っていましたが、
ごめん、第一印象はマイナスでした。
たまたま見かけた回が、少女エリンと幼獣リランに信頼関係が出来たことを、
中央に秘密にするかどうか、学校が協議する、みたいな回。だいたい大筋はわかった。

惹かれなかった要因は、
①、王獣が全然かっこよく見えない。尊い生き物らしいのに間抜け。
②、絵柄全体が、シリアスじゃないし、雑。
③、主役の娘のセリフが棒。
という、製作サイド方向が個人的好みにあわなかったことと、
④、エリンが、いきなり好きになれませんでした。

先生っぽいおばさんに「どう思う?」と聞かれて、
「くだらないですね」と答えたことにびっくり。
そう心で思うのは仕方無いが、先生が彼女を守ろうとしてることは、
事情を知らない私にだってわかるのに、その言い草か。
傲岸な娘だな、と思ってしまったので。

そもそも「獣の奏者」って。獣を操るのか。躍らせるのか。
どんなに仲良くなったとしても、野生動物を使役するだけの話ではないか。
・・・今思っても、だいぶマイナスだったなぁ、と思います。

長い前フリをしてしまいましたが、読んだ後は少しだけ気持ちも変わりました。
エリンの真摯さ、聡明さも嫌味無く伝わってきたし、
望まない方向に流れてしまうことの苦脳も、感情移入ができた。
Ⅱ巻のラストは、頭でっかちな理屈なんかどっかへぶっ飛ぶほど、
ものすごくシンプルで見事な感動が、自然に胸に湧き上がって来た。
ちょっと涙出たくらい。ある意味ベタかも知れないのに。

ですから、Ⅲ、Ⅳを読む気になれないのも、それが理由です。
ついうっかり、ネタバレを読んでしまったからですわ。馬鹿ですわね。

Ⅰ、Ⅱ巻で解明されのなかった謎が丁寧に明かされ、
完成度が上がって、満足度・評価はとても高いらしい。
逃げずにちゃんと読めば、ちゃんと納得できるように書かれているのかも知れない。
でも、どうしても読む気になれない。第一部のラストの感動が打ち消されそうで。
私は「フランダースの犬」でさえ悲しくて見られないヘタレです。
エリンの行動を、許容できる気がしない。しかもそんな惨いやり方で。
少し時間が経って、獣への思い入れが薄れたら、却って読めるかも知れません。

第一印象が悪かったア二メですが、原作への複雑な思いを補完してもらうため、
土曜日の再放送を録画してみています。
あらためてみると、闘蛇のイメージも違うし、変なギャグが寒いとか、
新しいマイナスもあるにはあるが、スキマの主題歌が予想外に素晴らしく、
丁寧に増やされたエピソードもだいたいは好ましくて、だいぶ好意的な気持ちです。
このままきちんと最終回まで見て、後味良くこの作品をシメたいと願っております。
ヘタレですので・・・
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by michiko0604 | 2010-02-01 23:07 | | Trackback | Comments(2)

WOWOWでドラマ化されて評判が良かったらしい、てことだけが予備知識。
厚い本だが、恋愛でも家族でもファンタジーでも何でもどうぞ、と思っていたら、
大直球の人間味たっぷりな社会・経済小説だった。ちょっと意外。
しかし読み始めたら止まらない感じで、突っ走って寝不足です。

大型運搬車両のタイヤが走行中に外れ、親子連れを直撃して若いお母さんが即死。
誰が見てもわかる、三菱自動車製トラックのタイヤ脱輪事故がモデル。
主人公は、整備不良の汚名を晴らそうと奮闘する、運送会社の社長・赤松。
巨大財閥企業に立ち向かう中小企業のしょぼいオヤジの戦いは、
ものすごく絶望的でどうもならんように思えるが、
大企業の中の派閥争い、内部告発、銀行の思惑、週刊誌の徹底取材、
同じ中小企業のエールなど、いろんな糸が少しずつ絡み合って、
ラスト、一点の曇りもない大逆転につながっていく。
ある意味予想通りのこの展開を、飽きさせずに引っ張りぬく筆力が凄かった。

それら一連の流れは、充分なリアリティに溢れて読み応えたっぷりなのだが、
うーん、まぁ、うまく作ってあるよなってところも、もちろんある。
このタイミングで、都合よくそれが来るかー。みたいな。
でもこれは、別に欠点にはなってなかったですね。それだけ上手い。
準主役の大企業の課長・沢田のキャラクターは複雑で深かったけど、
ほかの大企業、大銀行側の人間は、ほぼ全員わかりやすくイヤな奴。
これでもかってくらいしょうもない、ムカつくその連中が、ラストには、
どいつもこいつも、キッチリぎゃふんと言わされるあたり、めっちゃカタルシス。
会社関係に加え、小学生の子供とPTA関係の戦いも並行して描かれて、
おかあさんたちにも大変親しみやすくなってるが、
そちらの解決も、同様に小気味よい。

というわけで、内容も濃く読みやすく、読後感も爽快。
これは人にもお薦めです。

読み終わるまで我慢して情報も調べなかったけど、
ドラマのキャストは、赤松=仲村トオル、沢田=田辺誠一だそうで、良い感じですね。
DVDが出てたので、近いうち見たいかなと思います。
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by michiko0604 | 2009-11-27 15:25 | | Trackback | Comments(0)

分厚い上下巻でボリュームたっぷりでしたが、面白くてどんどん読めました。
さすが浅田次郎、日本人の涙腺にガツンと来ます。
クサさに引くのと紙一重なんだけど、ギリギリ踏みとどまってうまく泣けます。

新撰組に実在したらしい、吉村貫一郎というほぼ無名の武士が主人公。
約50年後、誰かはわからないレポーターみたいな人が、
彼の人となりを知るいろんな人に取材し、インタビューする、といった形式か?
吉村は、ものすごく立派な人として描かれていて、ここではわざわざ語りなおしません。
ていうか、改めて語ろうとすると気恥ずかしいし、嘘くさくなるだけですなぁ。
面白かったです、泣けます。でもクサイですよ。
それでもう言い尽くせているような気もするわ(笑

取材者の正体が最後に明かされると思ってたけど、深読みしすぎでしたわ。
別に関係者ではなく、単なる記者か作家だったらしい、そこだけはちょっと肩透かし。
最後のエピソード、吉村の末子の今の姿は、いくらなんでも出来すぎだろ、と、
突っ込みたいんだけど、やっぱり感動させられちゃうんですよね。
見事ですね、浅田次郎の力技。

新撰組のことは、知ってるようでいてそうでもなかったので、
この読みやすい本で、おおまかな流れを知ることが出来たことも大収穫でした。

映画も、内容ぎっしりの原作から上手にエピソードを選んで、よくまとまってました。
実際には10歳くらい離れてるはずの吉村と斉藤一が、
中井喜一と佐藤浩市で同世代って、いいのかそれはと思ったが、
反目しつつの友情物語として、しっかり筋が通ってたので、まぁ良いですよね。
そのぶん、大野次郎右衛門との友情は薄くなりましたが、ピントがぼけますから仕方ない。
余談になりますが、愛妻のしづさんは夏川結衣さんだったんだけど、
私にははるな愛ちゃんにしか見えなくて、出てくると笑っちゃって参ったわ。
観ていて、あまりのクサさに恥ずかしくなって逃げ出したくなるラインギリギリですが、
こちらも何とか踏みとどまって、泣けるんじゃないかなと、まぁ、思います。
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by michiko0604 | 2009-05-28 21:50 | | Trackback | Comments(2)

積極的治療を選ばない末期がんの男と、妻と愛人・・という設定は、
あの「象の背中」や白石一文の短編集中の「水の年輪」を連想しましたが、
男性からの視点で、成り行きは反対方向に極端だったその二作とは趣が違い、
女性側からのリアルな恋愛小説として、すんなりと感情移入できました。

三角関係だからって、必ずしもドロドロじゃなかろうし、かといってサラサラでもない。
妻の中の複雑な感情、温度は低いけど、怒りや執着や愛情がよく理解できたし、
愛人の、素直な思慕の情もじわじわと沁みてきて、双方にシンクロ。
真ん中にいる夫も、そりゃ身勝手には違いないんだけど、
実際男なんてこんな感じかもしれないな程度には、なんだか許してやれてしまいそう。

「もう切るわ」というタイトルの意味が描写される場面では、ちょっと泣きそうになりました。
自分の中にもあったいろんな切ない感覚を、少しずつ追体験させられる。
作者の思う壺だったみたいですねぇ。

淡々と嫌味のない、でも、心に残る小説でした。良かったです。
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by michiko0604 | 2009-04-16 01:07 | | Trackback | Comments(0)

備忘として簡単に。

「プルミン」
小学生のいじめっ子が、公園で怪しいオバサンに貰った乳酸飲料「プルミン」を飲んで中毒死。
母親たちの闇を交えて、犯人は誰か、動機は何か。
身近な背景なので入りやすく、謎の引っ張り方も上手で、ミステリーとして面白かった。
でも、たくさんの伏線があって、それ自体が興味深い・・・のはいいんだけど、
中にはぜんぜん本筋と関係のないフェイクもあって、軽く拍子抜けも。
オチも、悪くはないんだけどちょっと苦しいかなあ。動機はともかく、謎解きが。
B級の題材で人を寄せておいて、どこか「上から目線」に感じるのは何故かしら。
良いものを読んだという満足感までには行きませんが、まぁまずまず、程度かな。
読みづらくはなく、時間つぶしには役立つから及第。63点くらい。

「十四番目の月」
幼女誘拐事件。おかあさんの頭の悪さがポイント。
これも、犯人探しと動機の解明がなかなか面白かったですね。
ただし中盤はつまらない。所謂中だるみ。だるだる。単なるページ数の水増し。
結果的に大して本筋にも関係ないし、
警察関係者に魅力がないので、彼らの捜査に感情移入できない。
謎解きの鍵はプルミンと近く、これ作者さんの得意分野なんでしょうね。
解明自体も結末も、意外にあっさりだったけれど、私はこれも良かったと思う。
犯人と、解明した人と、双方に薄く共感できたから。
ですので、中盤の退屈によるマイナスと相殺で、プルミンと同じ、63点くらいで。

余談。
プルミンの中で動物虐待的な描写があるのですが、
例によって、他にもたっぷり語られている人間へのイジメよりも気分悪くなりました。
これはどうしてかなって、今回少し深く考えてみたんですが。
つまり自分にとって、小説や写真や映画にあらわれる動物と、
実際の動物とのあいだにはそれほど距離がないからなんですね。
同じくらいかわいくて、いとおしい。自分の猫だけは別格だけど。
でも、小説等の中のこどもと、実在の人間のこどもとの距離は遠いです。
つくりごとだと、ある程度切り離して捉えることが出来る。
だから、児童虐待よりも動物虐待の話のほうが、読んでてつらいんだ。よりリアルだから。
「だりや荘」の椿さんも、害意を向けたのが犬のサブレでなく人間の子どもだったら、
これほど嫌いだとは思わなかったかも知れないですね。ちょっとこの発想、危ないけどね。
ひとつ説明がついたので、特記しておきます。
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by michiko0604 | 2009-03-18 16:49 | | Trackback | Comments(0)

大きな賞を取っていて、たぶんそれなりに有名な作家さんと思われ。初読み。

「ベーコン」

ベーコン、アイリッシュシチュー、ほうとう、煮こごりなど、食べ物をモチーフにした9編。
1ページ目から「不倫かよ」と1mくらい引いてしまった点も補い、
よく出来て読みやすく、ピリリと諧謔も効いた女性好みの本でした。
江国香織作品に通じるところもあるが、雰囲気だけでなく生活感があり、共感もしやすかった。

初老の恋人の頓死から浮かぶ謎が、ある意味ミステリー仕立ての「煮こごり」、
ローティーンの悪意と暴走が恐ろしくも痛ましい「目玉焼き~」など、
シンプルに物語としてレベル高く面白いと思う。

で、個人的に印象が強かったのが、まず「アイリッシュシチュー」。
料理好きの専業主婦、その世界と視野の狭さ。些細な不安。
通り魔のような一瞬の裏切り(誰に対して?)。とても共感。感覚が近いのかも知れない。
外から見ると、ほんと矮小でしょうもないが、これはちょっと、わかっちゃうのがイタイ。

そして一番強く残ったのが「キーマカレー」ですな。
離婚が成立していない同棲中の恋人のところに、10代の娘たちが訪ねてきて、
身を隠す間、行き場を失って路頭に迷う(?)若い女。
境遇は全然近くないんだが、彼女の寄る辺ない不安、疎外感、
世界中から見放されたかのような一人ぼっち感があまりにもかわいそうで、
何故か一番感情移入してしまい、ラストの救済で泣けてしまいました、不覚にも。

これを筆頭にそういう「琴線」がいくつかあったので、
またそういう気分を味わわせてもらおうと、続けて借りたのですが。

「だりや荘」

すいません、これはダメでした。シンクロに失敗しました。
こちらは長編。ペンション「だりや荘」を継ぐことになった妹夫婦と、
心身の弱い、美しい姉との物語。言ってしまえば姉妹どんぶりってヤツですな。
このおねえちゃんの椿さんが、もう全然だめでした、気持ち悪くて。
妹の杏ちゃんがかわいかったので、何とか最後まで読めたようなもの。
阿呆でいい気なダンナの疾人も、ただただムカつきましたし。
不倫と見せかけた姉妹愛の話でもあるわけですが。

東京から疾人を追ってきた醜い女を「あのくるった女」とさげすんでいたけれど、
容姿が美しいだけで、椿だって彼女と大して変わりない。
妹たちの愛犬、かわいいサブレに害意を向けるエピソードなんて、ほんと度し難い。
妹夫婦にこどもがいれば、彼女はそれにも何がしかの悪意を向けたのか。
そういう彼女を哀れに思い、その情念を美しいと見られれば、
これは少女マンガのような雰囲気を持ったきれいな小説で、悪くもありません。
でも私はその世界に入れなかった。残念ですが。
ラストはハッピーエンドと解釈することもできるでしょうが、
私には、ああはいはい、もう勝手にやってください、としか・・・。

なんかこう、とても食傷した気分が残ってしまったので、
少しほとぼりを冷ましてから、もう一回借りてみようかと思います。
キライになったというわけでもないので。
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by michiko0604 | 2009-03-14 01:18 | | Trackback | Comments(0)

そんなわけで、最近祝日があったので、同僚がプレゼントしてくれました。
猫本チョイスということらし。全然知らなかったが、映画原作で多少話題作?

と言っても、グーグーとそれに関するエッセイの存在は知りませんでした。
大島弓子さんはもはや伝説的カリスマ漫画家でらっしゃいますが、
すいません、私はそんなにはまり込めなかった。
大島弓子派と萩尾望都派に別れるとしたら、迷わず後者ですし。
それでも、大島さんのいくつかの代表作を漫画文庫で持っていて、
その中に、前の飼い猫サバさんに関わる二冊も入ってます。
サバさんが亡くなったことは噂に聞きましたが、新しい猫を飼われたんですね。
そのへんは、同じ猫好きとしてお察し申し上げるあたり。

で、この本、映画の小説版ですが。
うーん。みんな、見に行くのでしょうか、この映画。
猫好きの人と大島弓子さんのファンの方は行くかもですが、
なんか、どっちの客層も満足させられないのでは・・・。
猫映画と呼ぶには、猫の比重はほんのちょっとだし、
主役がエセキャラなので、それこそファンはどこ見ていいかわからないのでは。
結構豪華キャストですが、ちょっと、どこに視点を持っていけばいいのか・・。
映像で見れば、さすがに全然違うのかな。でも、きっと見ないし。

古本屋ででも機会があったら、原作のエッセイを探してみます。
きっとその方が、自分の心に沁みるなにがしかが見つかるでしょう・・・。
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by michiko0604 | 2008-09-07 01:11 | | Trackback | Comments(0)

書くの忘れてましたな。誉めませんゆえ忘れたままでもよかったかもだが。

出版社勤務の、20代前半男女三人の三角関係メインの恋愛小説。
大崎作品らしく、硬質の文章は格調高く、
バラの庭の「摘蕾」や、人の死の際に痛ましく叫ばれる白鳥の「スワンソング」など、
冷たく澄んだ美しいエピソードが盛り込まれて、格好はついている。

でもこの作品に限って、全く入り込めなかった。
それは主人公3人、特に二人の恋人を結局大不幸にしてしまう中心の男に、
全然感情移入できなかったせい。

筋を簡単に言えば、しっかりものの恋人と3年くらい付き合っていた主人公が、
新しく職場に入ってきた若い女の子を好きになり、
優柔不断な態度で散々二人の女性を苦しめ、
バラの「摘蕾」になぞらえるように、結局前カノを捨てる。
前カノは粘着質に今カノをいじめ、今カノはノイローゼになってしまうという。
なんか全編イライラ。

その象徴が「駐車違反5回」ですわな。
弱り果てた今カノの面倒を見るために、彼は彼女の部屋に毎日通い、
徐々に自分も力尽きていくのですが、その過程で路上駐車して、捕まる。で、
「この道路は広く、交通量も少なく、ここに車を停めても誰も迷惑しない。
 それなのに何故、許されないのか。彼女は死にかけているのに」みたいな。
最後にはこれが、小奇麗なエピソードに仕立てられ、婦人警官も味方に。
これに感動できない私は、心が冷たいのか。
しかし私は、すいませんね、こういう発想をする人がダイッキライだ。

電車で通え。経済的に厳しいというのは自分の都合。言い訳すんな。
それが無理なら、一緒に住め。一緒に暮らして面倒みろ。
そもそも彼女がおかしくなったのは、お前が前カノの扱いを間違えたせい。
原因がわかってるんだから、それを取り除く努力をしろ。
ダメならダメで、納得させられるように誠意を尽くせ。
もう好きじゃないとしても、恋愛には何の保証もないにしても、
危機回避のためにだけでも、相手が攻撃的にならないように始末つけるべき。
ギリギリの努力をした後で、決まりを破ることを正当化する主張を始めなさいや!
それができなかったのなら、甘んじて捕まれ。

あらためて書いてもむかついちゃいましたよ(笑 ほんとキライなんだな、こゆの・・
そういうわけで3人のドキュンちゃんの物語でした。
ラスト1ページは、ホラーだと思います。
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by michiko0604 | 2008-08-31 02:00 | | Trackback | Comments(0)

「イニシエーション・ラブ」がおもしろかったので、
続けてこの作家さんを借りてみました。

人里離れた全寮制の女子高で起こった殺人事件。
真相を探る女探偵「黒猫」と新入生優子に魔の手が伸びる、みたいな。
その煽り文句で、うーん、とは思ったものの。

えーと。感想書くのが難しいですが、まず、予想してたのと全然違いました。
「なんじゃこりゃー」と、正直ドン引きでした。すいません。
まぁでも、筋立てや謎解き、科学的なうんちくとかは、
そんなに無茶苦茶でもなく、ある程度読み応えがあるといえばある・・のか。
この雰囲気、一言で表すとすれば「美少女エロゲ」とでも申しますか。
終盤どんどん怪しくなり、エロでグロでホラーになってしまいます。
そういうもんだと承知して読むのであれば、好きな人は好きでしょうし、
いや、悪くもないんじゃないでしょうか。
ただ単に、私は場違いでございますた。
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by michiko0604 | 2008-08-31 01:13 | | Trackback | Comments(0)