タグ:本・「は」行の作者 ( 5 ) タグの人気記事

新聞連載小説だそうです。知りませんでしたが。

中流家庭を自認する、医師の娘で48歳国立大卒専業主婦の由美子は、
高校中退フリーターの20歳長男が悩みの種。
その息子がある日結婚相手として連れてきた玉緒は、
由美子にとって度しがたく許容範囲外の「下流」の家の子。
ある事件で正面から対立し、身も蓋もなく由美子に罵られた玉緒は、
「医者の娘がそんなに偉いなら、わたしが医者になります!」と宣言し、
医学部を目指して猛烈な受験勉強を開始するのでした。
そして後半はドラゴン桜。

漫画みたいな話でたいへんわかりやすく、読みやすくて面白いです。
これを痛快と読むか、ちょっと不快と読むかは、その人の価値観ですな。
たぶん前者が圧倒的多数なんだろうなと思いますが。

新聞の書評を読んで借りたので、由美子さぞかしムカつく女かと思ったら、
それほどまでには感じなかったですね、私は。だからちょっとかわいそうかな。
玉の輿願望が強い美人の娘は、共感できるところがゼロだったからいいけど(酷)。
由美子が爆発する「ある事件」には、たぶん私でもかなり怒ると思うので、
勿論言いすぎなんだけど、わかる気持ちもありました。
展開やオチも、予想通りだしそれで面白かったが、
溜飲が下がったっていうほどでもない、そんな立ち位置。
でも、由美子さん、まだ大丈夫だと思いますよ。まだ間に合うよ。
ダンナさんはきちんとした人だし、子どもたちだって、まだ。
でも、あのラストシーンは、変わらないってことなんですね(笑

美形で優しいが、徹底的に覇気がない息子の造形は興味深かった。
中退の何が悪いのか、フリーターのどこが問題なのか、それとも無問題なのか。
自分の頭で考えて、自分の言葉で理解したいし説明できるようでありたい。
だから「二人で働いて30万円もあって、充分暮らせるからこれ以上は要らない」
という息子の主張については、結構つきつめて考えてみたり。
息子の最後の選択だけがちょっぴり意外で、でも納得で、
覇気は皆無だけど馬鹿ではないんだなと思うと、尊重したくもなったり。
いやいや、やっぱりダメだろ、と思い直したり。

自分の価値観やらライフスタイルについても、
ほんのりと見つめ直してみたりして、いろいろと楽しめる本でした。

この話題は、心もち後を引くかも知れません。
[PR]
by michiko0604 | 2010-08-29 23:41 | | Trackback | Comments(0)

図書館に、平山夢明入れてくださいって頼む人、誰なんだろ(笑
おかげで私もまたご相伴に預かることができた。

「ソウ」と関連付けて考えていたのは、まぁ単純にホラー系つながりだってことが大きいけど、
「ソウ」が「ホラーが苦手な人も、あえて乗り越えて鑑賞する値打ちのある映画」
という言葉で賞賛されてるのを聞いて、平山夢明もそれに通じるように思ったから。
と言っても、苦手な人、嫌いな人は、やっぱりやめたほうがいいかも。
「特にホラーが好きってわけじゃないけど読書は好き」くらいだったら、薦めたい。
「言葉」に殴り倒され、胸倉つかまれるような体験。それが意外に快感。危。

出世作「横メルカトル」よりはグロさは薄いと思うが、やっぱり痛くてキモくて臭い七つの短編。
どこかしかに超常現象が織り込まれた、ある種のファンタジーだというのも共通項か。
そして、おぞましくて気持ち悪いのだけど、全ての作品に、人と人を結ぶ愛があります。
(平山作品で、愛なんて手垢ついた言葉使っちゃって、ファンの方ごめんなさい。)
あるいはその分脇が甘くなり、ホラーの洗練という点で一段さがってしまうのしれないけど、
私は、前作よりもこちらが好き。読んでぐったりしたのは同じだけど。
平山作品に触れることで喚起される独特の感覚が自分の中にあって、
それがより濃く、豊穣で心地よかった。
でもそれは、ある程度のダメージとともにもたらされるものでもある。

「テロルの創世」
近未来SF仕立てで、一番グロくない。後味も悪くなく、優しく、読みやすい。
ちょっとだけスプラッタ場面もあるけど、必然性はあんまりないし。
長編に向かう導入部のようにも読めて、短編一本じゃもったいない感じだけど、
設定自体はありふれてるものかもしれない。
既成の骨組みを借りて、強烈な独自の世界観を肉付けしていってるのか。

「Necksucker Blues」
個人的に、一番ダメージ食らった話。一番悪趣味ですよねぇ?しかもわざと(笑
体質改善のためにミスター・G(謎)をいっぱい食べるリアルさが・・・ぐはぁ。
これだけは、なんだかあんまり救いもないし。
他の作品は、身もふたもないバッドエンドっていうのはなかったような気がする。

「けだもの」
狼男の話。悲哀とか切なさとか、けっこうオーソドックスな異形のドラマ。
ラストシーンはラヴです(ぇ)。
いや、でもそれを言うなら、すべてのラストシーンがラヴだけど。

「枷」
一番、平山作品色が濃いと思う。一番グロくてエグくて痛いのだが、名作と思う。
拷問のための拷問なんて、性描写と同じで最後にはマンネリになってしまうんじゃないか。
つまり全てはシチュエーション勝負。素晴らしい。こんなんで最後に感動が来るとは。

「それでもおまえは俺のハニー」
これは、グロいとこはそんなにはない方かと。
小道具がちょっと斬新な、異世界への扉。これも比較的わかりやすいラヴ。

「或る彼岸の接近」
ちょっと異色に感じた。めずらしく心理戦だったせいかしら。
少しずつじわじわとタメが長いので、これは好みが別れるかも。

「ミサイルマン」
平山作品の特色のひとつ、不謹慎な悪ふざけが冴え渡って笑えた。
出会い系で引っ掛けた女を次々無造作に殺していく、
とんでもない若者二人の物語なんだけど、青春小説のようにポップでキュート(何)。
彼ら二人のやりとりが洒落てて、「メルキオール」の12を思い出した。
最後にはよくできた映画のように、なんか妙にさわやかに終わるし。

という七編です。時間が過ぎちゃってもちゃんと書きたかったので、良かった。
慣れたせいか、横メルカトルのときよりもレビューすることでは消耗しなかった。
今はもう、あまりゲテモノとは思わなくなった。
汚泥の奥に、強い光の金の粒を内包した作品群。
万人向けではないかもしれないけど、「生理的にダメ」とかでなかったら、
よろしければお試しください
[PR]
by michiko0604 | 2007-12-14 01:07 | | Trackback | Comments(0)

図書館の本がまだあったのだが、なんだかちょっと疲れた感じで気合を入れたかったので、
ついフラフラと買ってしまいました。悪趣味な本を。元気つけようと思って。
しかし、これが意外に・・・と言っては失礼かもだけど、
あの「横メルカトル」に比べれば、はるかに普通の、読みやすい話だった。
そして、素で、ものすごくおもしろかった。あっという間にぐんぐん読めたし先が楽しみで。
さらに、想定外に「いい話」だったのも収穫。

まぁ、そうは言っても「比較的」なので、エグさも充分。ハルキホラー文庫だし。
不幸コレクターに依頼された「俺」が、調査に赴いた先の、異様な家族。
自分の三男の首を切断した女、白痴の怪力長男、14歳で白髪の次男。
「俺」は家族の秘密と確執に巻き込まれて、後戻りできない闇に落ちていく。
・・・というような、とっても怖いシチュエーション、なのですが。

設定はかなり強引だし、まぁそれはホラーだからしょうがないけど、
中盤で張られたはずの伏線、「俺」の殺人衝動の謎は、どうなっちゃったわけ?
「メルキオールの善根」の結末は、聞かせてもらえないんですか?・・
とかに代表される、微妙に納得行かない展開も散見。収束してないじゃんよ。

しかし、いつも気になるそこいらへんが、あまり気にならない。
怖くてキモい上に荒唐無稽な話なのに、全体からは上質のユーモアが醸されてる。
上質といっても、それは、気が利いてるってことで、趣味は悪いけど。
なにより比喩的な言い回しがとても豊か。これは見習いたいと思った。
「俺」はシニカルな言葉のセンスにあふれた、とっても魅力的な「能書きり(?)」。
「よく警官Aと警官Bに分離されなかったものだ」とか、不覚を取って笑ったし。

『こんなに失望したのは、女の胸を裂いた時に、中から饅頭の王様みたいな
 生食入りのシリコンパックが飛び出して以来。 
 あまりのことに頭に来て、空港の便所にまるごと詰めてやった』
とか、笑うような状況じゃないんけど笑っちゃう。どうしましょう。

そしてこれはメジャーな感想だと思うが、白痴の朔太郎が、ほんっとうにキュート。
「Ωの聖餐」をちょっと思い出す、グロテスクで残酷で凄惨なのに、
時に優雅で条件付で明晰で、どこか崇高ですらある。しかもユーモラス。

最初の頃にちょっと、「うっ動物虐待あるのか、ダメかなこれは」と引きかけたが、
なんだかあまりにもシュールなせいか、入れ込みすぎず作り話として読めたのも良かった。
今回も思ったけど、私は、人間が酷い目に会う話は結構平気だけど、
動物虐待はキビシイ。いずれにしても活字限定で、映像ではみんなダメだけども。

すっごい後味悪いっていうレビューもあったけど(でもそこが良いと)、私は良かったと思う。
また比較になるが「横メルカトル」に比べて、人の心の情緒的な部分があって、
殺しあっても愛があるし、結局はそれでしあわせだったようにも見えた。
それこそがホラーだという読み方もあると思うので、そのへんはお好みで。
死ぬのと生きるの、どっちがホラーですかね。散文的に言えば。

自分にとっては、想定外のヒットでした。おもしろかったです。
[PR]
by michiko0604 | 2007-06-28 00:18 | | Trackback | Comments(0)

なんというか、微妙でした。

レクター博士の怜悧さ、残酷さ、狡猾さ、神秘性と気品。
突出した優雅なまでの怪物性。
世間でも言い尽くされた、魅力の定説、だと思うんですけど。
「羊たちの沈黙」と「レッド・ドラゴン」は、何度も読み返したくなる傑作だったし。
「ハンニバル」も、まだ、シリーズの一編として、それなりにまとまっていた。
「ものすごく良かった!」ってほどの満腹感はなかったけど。
結局自分の好みとして、レクター博士にはジョーカーでいて欲しいんですね。
主役ではなく。そのほうが、得体が知れなくてものすごく怖いし、かっこいい。

少年期の悲惨な出来事のために、トラウマが残り人格がゆがみ、
そのから軌道が逸れていって、怪物が出来上がる。
それは確かにとても納得の行く道筋なのだが、結局方程式に過ぎない。
ジェイム・ガムやダラハイドと同じ。(いや、でもダラハイドは好きだけど)
彼ら一般の(というのも変だが)殺人鬼より、上の次元にいて欲しかったんでしょう。
まぁいろんな意味で、レベルは違うんですけども、同一線上だしね、これだと。

「紫夫人」のキャラも、なんか、日本人としてどうも気持ち悪い。
これは西欧人から見た、神秘的で謎な日本女性像なんじゃないか?
日本文化の造詣も、深いようでいて「だいたいこんな感じなんだけど」ですし。

ストーリー展開的にも、なんだか平板。敵がたくさんいて、どんどん復讐していくだけで、
特に美学も感じないし、まぁ、ほほ肉を食うっていうのはあるけど、
相手が強くなるとそんな余裕もなくなって来て、殺すだけで精一杯だし、
なんか優雅じゃないんですよー。どうも平凡で庶民的(?)なんですよね。
抑制が効いた短いセンテンスで、どんどん状況を浮かび上がらせながら
いつの間にか情景と心理状態と、情緒までも透けさせていく、、
小気味よく垢抜けた、洗練された文章が大好きだったのに、
なんだかそれも、ちょっと行き過ぎっていうか、脚本のト書きみたいになっちゃって
説明してるだけ、みたいで今回は全然美しく感じなかった。

レクター博士関係なく「こういう話」として読んでしまえば、きっと普通にアリなんでしょう。
でも、「トマス・ハリス」だから買ったのであって、そうでなければ読まなかった。
そして満足度は平均点以下です。期待が大きかったからね。

映画はまだ見られる当てはないですが、主人公の青年が、
ものすごく美しく優雅で、それを見るだけでも値打ちがあるという噂なので、
とりあえず楽しみにはしています。
[PR]
by michiko0604 | 2007-06-19 21:40 | | Trackback | Comments(0)

ぐったり。
とんでもない本を読んでしまったが、ある程度とんでもないことは承知の上だったので、
とんでもないということ自体に、抗議したりはしない。まったく。

2006年の「このミステリーがすごい!」第一位作品。
別に毎年チェックしているわけではなく、今年はたまたまだったんだけど。
(さっき歴代のランキングを見てみたけど、全然チェックした記憶なし)
純然たるホラーで、エグくてグロいが素晴らしい、との書評、
なんとなく図書館にあるとは思えなかったのだが、調べてみたらあったので、
ちょっと思い切って挑戦してみたんですが。

最終的には、あれこれ考え合わせて。良かった・・・と、思う。かなり消耗したけど。
どれもこれも、エグくてグロい八つの短編。
人肉食いとかスカトロとかスプラッタとか拷問とか、痛いし怖いし、汚いし臭いし。なんかもう。
文字だけで構築されるものすごい世界観に、五感に響くほど生理的に圧倒される、
恐らくホラーとしては文句なしなんだと思う。体調の悪いときには読み続けられなかった。

それでも、その気持ち悪さの中に不思議な端正さがあり、時に、か細い光がある。

「Ωの聖餐」はグロテスクで知的で、その知的さがまたグロテスクで、
それでもラストには、ほんの僅か納得してしまったり。幸せなのかもな、とか。怖。

「オペラントの肖像」は、なんとなく「1984年」を髣髴させて、比較的エグくもない。
オチが途中で読めてしまうのは残念だけども、仕掛けが幾つも丁寧に組み立てられてる。
この設定を短編一本というのは、贅沢だな、と別な感心。

表題の「独白するユニバーサル横メルカトル」が、一番万人向けなのではないか。
そもそもなんなんだこのタイトルは?というと、図法の名で、地図でした。
これは普通に、斬新なミステリーとして楽しめた。

「卵男」は、読みが外れて意外な展開だったので、それまでの話はなんだったんだ、という
必然性に対する微妙な疑問は残るものの、印象にもまた残っている。
あ、やられたか、というミステリーの醍醐味を味わえた。ちょっぴり。

「すまじき熱帯」は、一番ユーモラス。でもグロイしエグいし悪趣味で、救いもない。
でもきっとこれでいいんでしょう。多分求められた通りなのだ。

「ニコチンと少年ー乞食と老婆」、これを第一話に持ってきたのって、うまいと思った。
すごくキモいし怖いしむごいが、身近で読みやすい。ホラー入門(違うけど)。

「無垢の祈り」は、子どもの視点という意味で上のと似てる。
それでもこれが一番、救いがある。って、全然一般的な救済からは遠いけど。

締めくくりの「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」
これが一番、味が濃いと思う。作中にも触れられるけど、ダリの絵を思い出させられる。
悪夢やひどい不安、正視に耐えないむごたらしい拷問の描写で吐きそうなほどだけど、
この悪酔いの中に、恍惚を見出す人もいるのではないか。と、思えた。
めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど、どこかしか揺さぶられるものが残る。怖(再)。

1話ずつ思い出してレビューすることで、また改めて消耗しました。ぐったり。
刺激の絶対値は強大です。それでも、悪かったとか、読まなければ良かったとは思わない。
強い人にはお薦めしてもいいかもしんない。「トリップ」体験ができます。それは確かに。
[PR]
by michiko0604 | 2007-02-14 22:12 | | Trackback | Comments(0)